13年12月09日//都筑区防水塗装 はじめてのウレタンとの触れ合い



私やダイさんが準備をしている間、竹内さんは軒天を刷毛で塗布していました。
ひげを隠すようにしっかりと上まで伸ばされたネックウォーマーと、ニット帽が寒さを表しているようです。
広い外壁などはローラーで、もちろん軒天もローラーで塗る事が多いんですが、狭い場所だったので刷毛で細かく塗布しています。刷毛のサイズも大きいものから小さいものまであるのですが、今回は小さい刷毛を動かしていました。
手元には一斗缶から取り分けた塗料がプラスチックのカートリッジに入ったものがあります。これだと小さくて動きやすいですし、外壁などだったら一斗缶が必要なのですが、軒天等の狭い場所を塗るにはもってこいの大きさです。


塗料を入れ終わったあとは、ここからが本番です。ダイさんが用意してくれた工具で、塗料を希釈していきます。
本田が希釈中隅までしっかりと出来るように刃を一斗缶にあてるのですが(もちろん一斗缶が切れるようなことはありません)、その時ガタガタと揺れてぶっとびそうで怖いので両足で挟んで希釈しました。
凄い勢いの機械に鍛えてない体は揺れ動いて定まらず、ダイさんのように全体を混ぜたいのですが、勢いに持ってかれて一か所しか動かせません。
しかも引き金を引くようにスイッチを入れるタイプのものだったのですが、一回掴んでしまうと勢いに押されて指が離れないのです。なんとか指を剥がして混ざってなさそうな所にあてても、結局右下隅に戻ってしまう。どうにか右下から抜け出すために、腕だけではなく体を使います。
それを何回か繰り返した所で、仕上げはダイさんが混ぜて完成です。
本当にちゃんと隅まで混じっているのか不安で仕方ないのは、見えないし慣れないからかもしれません。


この希釈した塗料、てっきり塗装用なのかと思っていたら、穴埋め用のパテだそう。
モルタル面が悪いと、ウレタンを塗ってもぽこぽこと空気穴が出てしまうんだそうです。もちろんこれは普段はウレタンを塗布すれば埋まるのですが、今回は体験・経験と言う事もあり、パテ付けを用意してくれたみたいです。
実際足場に、私たちははしごを使って登ったのですが、ダイさんは塗料を足場に乗せて側面からひょいひょいと上がります。もちろん慣れているから、と言うわけではないのでしょうが、彼が高所恐怖症だと知っている分驚きは増すばかり。ええー、と思いながら、せっせと重い体をはしごで上に持ち上げます。
2段目に上って下を見下ろせばリアルな高さに足も竦みますが、足場の頑丈さとメッシュシートが目の前を濁らせてくれるので恐怖も薄れます。普段、塗料の飛散を防ぐためにあるものだと言う認識が強いので、思わぬメッシュシートの効果に驚きました。

ベランダは、2つありました。便宜上、広い左側と狭い右側、と記しますが、右側はまだ未施工。
洗浄を終えただけのベランダで、左側がウレタンの1層目とクロスまでを終わらせたベランダです。
ウレタンは1層でもとても艶やかで、既に半分出来あがっているようにも思えます。
これもしっかりと施工しているせいなのかは分かりませんが(悲しいかな、塗装って見た目は誰でも上手く出来ているように見えてしまうんですよね。実際効果が分かるのは数年たってからなんですから)。
パテ塗りは、私と佐藤さんが行いました。

先にも書いていましたが、元々体を動かすのは好きな方。
小さな頃から木のぼりしたり、崖登りしたり、ドングリ拾ったり……とやんちゃ坊主のような生活をしていたので、ベランダにもひょいと入ります。
出来るだけ足音をたてないように入るのは、住居の方にご迷惑をおかけしないように、っていうのもありますが、そこはちょっとした女子の……あれです。
靴は痕が付いてしまうので、足場の所で脱ぎました。
靴下もちゃんと暖かいものをと思って履いたのですが、もちろん見えるわけもないと思って機能性重視。
しかも毛糸系なので、少しぺたぺたとします。
乾いているのに少しペタ付くウレタンに、驚いたのを思い出しました。

まずは、ダイさんの見本をまじまじと見させてもらいます。

一斗缶の中からオレンジのゴムベラ――形で言えば、お好み焼きとかで使うコテのような形――を軽快に動かします。
それはもう簡単そうにひょいひょいとやって見せてくれ、丁寧にゆっくりと何度も見せてくれるので、私たちも食い入るように見つめました。
「どうですか、出来そうですか」
そう聞かれても、すぐに返事が出来ないのは、私たちがいわば事務員で、ダイさんは職人だから。
少し言い淀む私たちを前にからからと笑ったダイさんは
「難しい所は自分やりますね」
の一言と共に、あれよあれよという間に手際よくパテ塗りをしていきます。

その姿を見て、なんだか出来るような気になってくるのも仕方ないかもしれません。
さっき私が練ったパテを真ん中に置いて、佐藤さんと2人分かれます。女子2人が余裕を持って2方向に分かれられる程の広さのベランダなのに、何故だかとても狭く感じました。
さっき見せてもらったダイさんの手つきを真似て、ゴムベラでパテを掬いあげ、ペタリとウレタンになすりつけます。
ところが全然上手くいかない。ぼたりとくっついてしまったパテを伸ばそうとしても、全く均一に伸びる事がありません。分かるんです、物凄い山になってるって。素人目にも分かる酷い出来に、少し焦りを感じます。
これが普通の、例えば自分の作品の1つであればここからどうにかしようと思うのですが、あくまで人の家。変な施工になってしまうのなんて避けたいので、慌てます。

ゴムベラを立ててみたり、一生懸命平べったくなるように平らな所で撫でつけた所で、硬いパテは伸びません。
どうやらそれは私だけではなかったようで、反対側で佐藤さんも不思議がっている様子が伝わってきました。
それは私だけではなく、ダイさんにも伝わったのでしょうか。
「ヘラを最初は立てて、最後に寝かせれば大丈夫っす」
その言葉を盗み聞きして、思い描く通りに、再び少量のパテをゴムベラにとってウレタンに着けます。
さっきと違うのは、聞いた通りにゴムベラを縦にして薄く延ばしてから、最後に寝かせて一気に伸ばす。
そうすると、さっきまでの不格好な山なんて何のその、綺麗とまでは行かなくても、どうにか私の手でも修復出来る程度の平たい面が出来上がるじゃありませんか。さすが!と心の中で感嘆を漏らしながら、どんどんと作業を勧めます。

ウレタン地が悪すぎたせいなのか、穴はぽこぽこと凄く空いていて、でも確かに上から塗布をしていけば埋まるような穴だったのでそこまでやる必要もないのだろうな……と思いながら、初めてのパテ塗布中ウレタンとの触れ合いに楽しくなるばかり。
ウレタン自体は凄くひんやりとしていて、どんどんとつま先の温度を奪っていきます。ついでにぺたぺたしているので、靴下まで奪おうとするんですから、何度か履き直しました。
夢中になりすぎてどんどん穴を埋めていたらさすがにやりすぎたのか、そろそろ、と言うダイさんの声で顔を上げます。
そうそう、ドレンの周りは、どうやって塗料が流れ込まないようにしているんだろうと思っていたのですが、くるりとガムテープを巻いていました。しかも、粘着面が外側。いわゆる養生と同じ形ですから、ウレタンがくっついたところで綺麗に剥がせるという事なのでしょう。知らなかった小さな工夫です。