寒さも厳しくなってきた、12月9日。
たった4日前の5日の塗装の興奮も止まないままに行ったのは、兼ねてから謎でしかなかった防水塗装の現場でした。
私自身が動画や画像のやり取りなどはカズさんよりダイさんとやっていたし、多く情報を仕入れていたのも疑問に感じていたのも防水の方だったので、ついに謎が明らかになるのか、と少しワクワクしながら朝を迎えます。
普段の仕事よりも2時間も早く起きなければいけない朝は、ワクワクした気持ちを隠しきれないとはいえ、けれどやっぱり寒い冬です。
眠気と寒さに負けて布団の中へ逆戻りしそうになる体をどうにか起こして、さっさと着替えます。
元々寒がりで暑がりと言うめんどくさい体質なので、それはもうしっかりと着込もう、と、年頃の女子のような小奇麗な格好とはオサラバ(と言っても、事務所でも大体ジーパンで過ごす女子力のなさですけれど)して、上にはもこもことトレーナーを着こみ、下にはタイツと、あ、でも上からニッカポッカを履く事を考えてスキニーパンツで……。
寒さ対策万全。
やはり普段の始業時間より2時間早くついた事務所で、作業着を全部、私服の上から着込んで現場に向かいます。
私の上着やニッカポッカは、前回の塗装現場で使用した中塗りのピンクの塗料でべっとり汚れています。
他の二人を見てもそこまでではない。
もちろん塗料で汚れてはいますが、ちょっと私の作業着はひどい。
夢中になりすぎて、背中とかすっごい擦ったんですね。
ベランダの中で振り返って、ごっそり落ちている塗料を見て冷や汗をかいたのを思い出します。
あわてて上から修正したので大丈夫だとは思いますが、それからとても周囲に気を遣って体を動かしました。
多分素人だからここまでべったりと付くのだろう……と、そういえば前回、一級塗装技能士の川口さんや星野さんを見て思いました。
だって飛沫しかついてないですもの。私の場合はもう思いっきりべっとりです。
当日は、朝は7時に集合。
普段9時から働きますので、それを考えても朝早い時間です。眠さと寒さはマックス。
前回も思いましたが、職人は毎度毎度過酷だと実感します。
だって私たちは”体験”という名目でたった1日向かうわけですが、職人はこれが毎日なわけです。
一級塗装技能士であり、当社でもエースで活躍してくださっている川口さんも、朝は3時に起きると仰っていました。
「鶏より早く起きるし、新聞屋と挨拶をするんだ」って笑いながら話していらっしゃいましたが、いやそりゃ大変ですよね……と心底思う朝。
車に揺られていくのですが、寒さにも暑さにも弱い上に車酔いまでするので、個人的に最悪な条件が揃っています。
車酔いのための薬も飲み忘れたので、内心冷や汗がとまりません。
運転は、カズさんがしてくださいました。もとより饒舌な方なので、今回も良く喋ったり話しかけてくれたおかげで、車酔いは軽減です。ありがたい限りです。
しかし車の中の私は、普段の猫背なんてどこへ行ったのかと言うレベルのまっすぐな背筋です。
車の後ろには、塗装現場で使う様々な道具がてんこ盛りでした。
養生テープから、刷毛をしまう箱から、なんかもう色々と……余裕がなくて見てなかったので、今これを書きながら後悔しています。
もっと見ておけばよかった。
道中、同業者と思われる車が前に居ました。
それを見たカズさんが「あれで刷毛平気なのかな…」と漏らすので、一緒に乗っていたみんなが「そうなの?」って顔でカズさんを見ます。
もちろんわたしも「そうなの?」って思いました。
正直、指一本でも動かせば状況が変わって、酔いが回るのでは…?という恐怖もあるので、視線を動かすだけで精いっぱいではありましたが。
あ、そういえば運転するようになったら酔わないって良く言われるんですけど、それって運転している時限定で、結局誰かの運転だったら酔うのでは…?と思うのですが、実際はどうなのでしょうか?
カズさんの運転に揺られながら到着した今回の現場は、都筑区の一般住宅。
静かな住宅街で、手前のお宅はなんだか西洋の雰囲気と言いましょうか……玄関は路面に面しているのですが、その前が少し折りかえすような、螺旋のような階段で、その手前が花壇になっているのです。
冬なので何もなかったのですが、これが春先だったら、綺麗な花が植わっているんだろうなあ、それはさぞかし綺麗だろうなあ。プリムラやマーガレットなんかあるのかな…と、想像をかきたてられるような雰囲気でした。
少し西洋チックだったかも。とっても可愛い玄関口だったので、印象が強いです。
現場に付いてみると、車の中には、現場監督の一級塗装技能士の竹内さんと、ダイさんがすでに到着されていて、挨拶をしようと車の中を見たらそれはもうビックリしました。
いつも綺麗でダンディなおじさまである竹内さんの口周りがもっさりとひげだらけ。ええ、と驚いていたら
「孫のためにサンタやるんだって」
と笑いながらカズさんが教えてくださいました。
元々孫煩悩と言いますか、優しいとは思っていたんですが、そんなエピソードに朝から心がほっこりします。
車酔いも酷くないので安心しながら車を降りて、今日1日の大体の流れを伺います。
前回の栄区の施工では、職人1人に女子1人、と分散して1人ずつついて回らせていただいたのですが、今回は3人でダイさんについて防水を見学させていただきます。
1人に3人が、ガッツリカメラ抱えて回るので、普段と違う施工になるんだろうな……やりづらいんじゃないかなあ、と思っていたのが的中すると知ったのは、大体9時間後くらいの話です。
作業をする前、着ていた上着を脱いだ途端にひんやりとした空気が体にまとわりついて、背筋が震えます。寒いったらありません。
動きやすさを重視すれば必要ないかもしれませんが、その前に凍えて体が動かないなんて悲しい事態は避けるため、社長に「汚れるだろう」と渡されていたヤッケを着込みました。
ヤッケ自体がレインコートのような感じで、でも値段通りの安い感じ……と言うか、まさに使い捨てって感じの質感ではあるのですが、驚く事に防寒にはもってこい。
すっごいあったかかったです。多分カシャカシャした素材(懐かしい感じで言うとシャカパンなんてものが存在しましたね)で出来ていたので、体温を逃がさなかったのかもしれないです。
ちょうど胸の所にポケットがあったので、そこにメモ帳とボールペンを仕込んでいざ現場へ。
作業初め、塗料を準備するダイさんの横で、竹内さんとカズさんが門のあたりに布シートを掛け始めました。
最初は何をしているんだろうと思ったのですが、塗料が飛散して汚れないための防護ですね。
塗料ってそんなに飛ぶの?と思われる方もいらっしゃると思いますが、そう、塗料って思ったより飛ぶのです。
私もおかげさまで、眼鏡の縁がピンク色で汚れています。
本来ならばマスカーで養生をしたい所かもしれませんが、そうやってしっかり養生をしてしまうと、ご家族が生活しづらいだろうと言うことで、毎回布シートをかけているのかもしれません。
朝はお出かけされる奥さまに、朝なので大きい声を出せはしませんでしたが、会釈をしてご挨拶をさせていただきました。