13年12月09日//都筑区防水塗装 ウレタン塗装の難しいところ



ダイさんが両手足をウレタンの中に付けている姿を、一際大きな声を上げて見守る事しか出来ない私たち。
ダイさんも防水施工をやってとても長いのですが、こんなことは初めてだと本気で凹んでいます。
私たちはひとまず、色々とウレタンをぬぐえるもの(塗料をふき取る為に持っているウェス(端切れ)だとか、使った軍手だとか)を差し出します。
ぺたつくウレタンと散々お話させていただいていますが、本当にべたつきが取れず、私が当日持っていたメモ帳も、未だに少し手につくくらいです。
履いていた靴下も、履きふるしたスニーカーもウレタンまみれ。
「本当に落ちないんですよ……」
ダイさんの悲痛な呟きが、今でも鮮明に耳に蘇るようです。

しきりに「最悪だ」と漏らして、ダイさんは靴下を脱ぎ、靴を脱ぎ、一旦拭い、そして自分が落ちてしまった場所のウレタンをローラーで整えます。
もう、凹みっぷりは半端じゃありません。
慣れない作業をしていたわけでもありませんし(確かに状況は少し違ったかもしれませんが、それでも集中力が飛ぶ程のものでも無かったと思うのです)、ただ、私たちが施工をする際に少しずらしたり動かしたりしてくれた室外機のバランスがうまく保てていなかっただけ、なのですけれど。
それにしても、幾らミスをしたとはいえ、とても綺麗な仕上がりになっています。
「もう綺麗に仕上がればそれでいいです」
半ば投げやりではありましたが、そういって無心でローラーを転がすダイさんの姿を、多分忘れることは出来ないでしょう……。

全て終わってから、残った塗料でダイさんが一つ実験を見せてくださいました。
それも、道具などを全て洗い終えるまでに出来るもの。
促進剤を入れすぎてしまうとどうなるか、です。
硬化剤は元々、ほんの少量しか入れません。
間違えて入れすぎると早く固まりすぎて、塗布が出来なくなるからです。
ダイさんがシンナーでゴムヘラやコテ、更には自分の手など、全てを掃除する間、私たち三人は一斗缶の中をまじまじと覗きこみます。
一見、全然変わってないように見えるんですよね。

今まで見た作業の中での疑問点を質問しながら待つこと20分ほど(掃除はまだ終わりません。ホント、大変なんです……)徐々にウレタンが硬化を始め、気付けばローラーの棒だけで突いても塗料が一切付かないどころか、既にジェル状になって固まっているのです。
一度10分経ったくらいで途中で一斗缶を揺らしてみましたが、ゆたゆたと揺れる状態で、さっきまでの少し重たいけれど固まっていない塗料……表現が難しいですけど、少しジェル状のような見た目で、既に固まっているのが分かるような。
固まってしまった塗料にダイさんがウレタンを流し込んでくれたのですが、まあ驚いたことに、ほんの数十分の間にもう固まってしまっているんです。
これが程良い状況ならいいですが、下手をすると、下でネタを練って、ベランダまで持ち上げる段階で硬化してしまって、塗料に使えない……なんて状況もあるそう。
これでは塗装なんて出来ようもありません。
便利な促進剤も、不便なものへと変貌です。

見せて頂いたのが最後で、ダイさんの片付けも終わり、あとは車に全てを詰め込むだけ。
最後には記念写真として三人で並んだ写真も撮っていただきました。
わたしは下を向いた、というよりも、ヘルメットを見せたい……っていう言い訳の元、本当は顔を隠したくて、もっともらしい言い訳を考えただけなんですけれど。

二枚ほど撮っていただいた写真の私たちは、職人みたいに汚れていました。
もちろん、うちの会社にいる職人さんみたいな感じではなくて、べたべたと塗料がくっついてしまった不格好なジャケットにニッカポッカでした。
職人さんの服も汚れてはいるのですが、それはどれも飛沫が飛んでしまったようなもの。
私たち――特に私みたいに、夢中になりすぎて体を擦ってしまったから、なんて汚れはとうに卒業しています。
さすがに塗料缶に触れるのは邪魔だろうと出来なかったため、一通り纏めて、最後にダイさんのウレタンの中に飛び込んでしまってへこみまくったぼやきを聞いて、終了です。
最後は着込んでいた作業着を脱いだのですが(下にはスキニーパンツとかはいたままだったんですよ)、一回脱いでみたら寒いのなんの……えっちょっと寒すぎるな、と思いながら、いそいそと服を着こみます。

行きは会社から現場まで連れてって頂きましたが、帰りは電車で。
私たちは普段これで終わりなのですが、職人はまた現場に戻って塗料の片づけをし、そのあと時間があれば見積もりに……など、休む暇がありません。
営業だけなら誰でもできるのですが、やはり職人の知識と最適な塗料を選ぶ、というのが当社のポリシー。
上手な営業トークよりも、下手な説明が多いかもしれません。
作業着のままうかがうので、少々いかつい面もあったりはしますが……みんな気のいい職人たちなのですよ。

普段は生で見ることのできない防水塗装。
ダイさんの施工を見る、間の準備を見る、等全てが新鮮だった一日は、思わぬハプニングまでも迎え入れてくれる、刺激的な一日でした。